ここまで、バックアップ・ゴミ箱・プライベートファイルなど「すでに溜まった容量」の整理方法を中心に解説してきました。

しかし、ストレージ管理で最も重要なのはこれ以上増やさない仕組みを整えることです。

第4回では、以下のような長期的に安定したMoodle運用を支える「予防策」についてご紹介します


ファイルアップロードサイズの制限

サイト全体の最大アップロードサイズ

設定場所

管理 > セキュリティ > サイトセキュリティ設定 > 最大アップロードファイルサイズ

ここで設定した値が、サイト全体の上限になります。
組織の用途に応じて適切な上限を設定しましょう。

  • 例:50MB、20MB、10MBなど
  • 無制限や極端に大きな値(例:500MB以上)は避けましょう

「どのくらいのサイズが適切?」と迷ったら、まずは50MBから始めて、教師からの要望に応じて調整するのが良いでしょう。

コースごとの最大アップロードサイズ

コースの設定画面で、コースごとにも最大アップロードサイズを制限できます。
サイト全体の設定よりも小さい値を設定することも可能です。

教師に説明して、コースの性質に応じて調整してもらいましょう。
例えば、テキスト中心のコースなら10MB、動画を扱うコースなら50MBといった具合です。


2. ファイルの重複を防ぐ:プライベートファイルを活用する場合

前回の記事では、容量やセキュリティの理由からプライベートファイルの無効化も選択肢の1つとしてご紹介しました。

しかし、プライベートファイルを有効にして運用する場合は、適切な運用ルールを定めることで、ストレージ容量の効率化に大きく貢献できます。

同じファイルを複数のコースで使用する際、それぞれのコースにアップロードすると容量が無駄になります。
プライベートファイルからのリンク機能を活用すれば、1つのファイルを複数コースで共有でき、容量を大幅に削減できます。

重要: この方法は、プライベートファイルを有効にしている組織向けの内容です。無効化している場合は、本セクションの最後にある「代替案」をご参照ください。

プライベートファイルからのリンク活用

同じファイルを複数のコースで使用する場合、それぞれのコースにアップロードすると容量が無駄になります。

非効率な例:
- 同じPDF資料(5MB)を4つのコースにそれぞれアップロード
- 結果:5MB × 4コース = 20MBの容量消費
- 更新時:4つのコース全てで差し替え作業が必要

効率的な方法:
- 1つのファイル(5MB)をプライベートファイルにアップロードし、4つのコースからリンク
- 結果:5MB × 1箇所 = 5MBの容量消費
- 更新時:プライベートファイルの1箇所だけで全コースに反映

操作方法

  1. ダッシュボードまたは右上のユーザーメニューから「プライベートファイル」をクリック
  2. 「ファイルを追加」ボタンをクリック
  3. ファイル
  4. 保存

コース内

  1. コース1を開き、「編集モードをオンにする」
  2. ファイルを表示したいセクションで「活動またはリソースを追加する」をクリック
  3. 「ファイル」を選択
  4. 名前を入力(例:「資料」)
  5. 「ファイルを選択」エリアで、ファイルピッカーを開く
  6. 左側のリポジトリ一覧から「プライベートファイル」を選択
  7. アップロード済みの「資料」を見つけてクリック
  8. 重要:「エイリアス/ショートカットを作成する」にチェックを入れる
  9. 「このファイルを選択する」をクリック
  10. 設定を保存してコースに戻る

更新時の作業(ここが重要!)

シラバスを更新する必要が出てきたとき

  1. プライベートファイルにアクセス
  2. 古い「資料.docx」を削除
  3. 新しいバージョンの「資料.docx」を同じファイル名でアップロード
  4. 完了! 4つのコース全てで自動的に新しいバージョンが表示される

ポイント:

  • ファイル名を同じにすることが重要です
  • プライベートファイルで1回操作するだけで、リンクしている全てのコースに反映されます
  • 各コースで個別に更新作業をする必要はありません

この方法により、1つのファイルを複数コースで共有でき、ストレージ容量を節約できます。

ご注意

「エイリアス/ショートカットを作成する」を必ず選択

ファイルピッカーでファイルを選択する際、以下の2つのオプションがあります:

  • コピーを作成する(デフォルト): ファイルを複製して各コースに保存。元ファイルと独立するため、容量が増える
  • エイリアス/ショートカットを作成する: 元のファイルへのリンクを作成。元ファイルを更新すると全箇所に反映される

必ず「エイリアス/ショートカットを作成する」を選択してください。

ファイル名を変更しない

リンク方式では、ファイル名で参照されています。更新時に別のファイル名でアップロードすると、リンクが切れてしまいます。
必ず同じファイル名で上書きしてください。


3. 運用ルールの明確化

技術的な制限だけでなく、教師や学生に向けた運用ルールを整備することも重要です。

教師向けガイドラインの作成

以下のような内容を含むガイドラインを作成し、教師と共有しましょう:

  • アップロードサイズの上限:「1ファイルあたり○MB以内」
  • ファイル形式の推奨:「資料はPDFで」
  • 重複防止のルール:「同じファイルを複数コースで使う場合はプライベートファイルから」
  • 定期的な見直し:「学期終了時に不要なファイルを削除」

プライベートファイルの運用ルールを定める(有効化している場合)

プライベートファイルを有効にしている組織では、以下のような運用ルールを定めることをおすすめします。

容量制限の設定

前回ご紹介したように、ユーザーごとのプライベートファイルの容量上限を設定しましょう。

設定場所:
管理 > セキュリティ > サイトセキュリティ設定 > プライベートファイルスペース

推奨設定例:

  • 学生:10MB~50MB
  • 教師:50MB~100MB
  • 管理者:100MB~200MB

利用目的の明確化

プライベートファイルの利用目的を明確にし、教師に周知しましょう:

推奨される使い方:

  • 複数コースで共有する教材ファイル
  • コース間で再利用する資料
  • 定期的に更新が必要な共通ファイル(シラバス、評価基準表など)

推奨されない使い方:

  • 個人的なファイルの保管場所として使用
  • 大容量の動画ファイルの保存
  • バックアップファイルの長期保管

定期的な確認と整理

教師への依頼事項:

  • 学期末にプライベートファイルを見直し、不要なファイルを削除
  • 使用していないファイルは削除
  • 大容量ファイルは外部サービスへの移行を検討

管理者の確認作業:

  • 第1回でご紹介したカスタムレポートで、プライベートファイルの使用量が多いユーザーを定期的にチェック
  • 容量超過や不適切な使用が見られる場合は個別に連絡

プライベートファイル運用の判断基準

組織として、プライベートファイルを「有効にする」か「無効にする」かは、以下の点を考慮して判断してください:

有効にする場合の条件:

  • 適切な容量制限を設定できる
  • 定期的な監視・管理体制がある
  • 教師向けの運用ルールを整備できる
  • ファイル共有による容量削減効果が見込める

無効にする方が良い場合:

  • 容量逼迫が深刻で、すぐに削減が必要
  • 管理リソースが限られている
  • セキュリティポリシーで個人ファイル保存が禁止されている
  • 外部リポジトリ(Google Driveなど)の利用が可能

前回の記事も参考にしながら、組織の状況に最適な判断をしてください。

定期的なストレージチェックの習慣化

以下のような定期チェックを運用ルールに組み込みましょう:

  • 月次チェック: 全体のストレージ使用状況を確認
  • 学期末チェック: 大容量ファイルのユーザーに連絡
  • 年次チェック: 古いコースやバックアップの整理

第1回でご紹介したカスタムレポートを活用すれば、これらのチェックを効率的に実施できます。


補足:プライベートファイルを無効化している場合の代替案

前回の記事でご紹介したように、容量やセキュリティの理由からプライベートファイルを無効化する選択をした組織もあると思います。

その場合でも、ファイルの重複を防ぐ方法はあります。以下の代替方法をご検討ください:

代替方法1:サーバファイルを使用

  1. メインとなるコース1つを選び、そこにファイルをアップロード
  2. 他のコースから、そのファイルにリンクを作成
  3. ファイルピッカーで「サーバファイル」リポジトリを選択
  4. コース1のファイルを選択し、「エイリアス/ショートカットを作成する」にチェック

注意: この方法では、メインとなるコースを削除するとリンクが切れてしまいます。

代替方法2:組織で許可されている外部リポジトリを使用

組織で以下のような外部リポジトリの使用が許可されている場合:

  • Google Drive
  • OneDrive
  • Nextcloud

これらのリポジトリからリンクを作成することも可能です。


ポイント

  • 容量削減よりも「増やさない設計」が長期運用の鍵
  • アップロード制限は「適切な低さ」を保つ
  • プライベートファイルを有効にする場合は、適切な運用ルールを定める
  • プライベートファイルからのリンクで重複を防ぐ(有効化している場合)
  • 「エイリアス/ショートカットを作成する」を必ず選択
  • 外部サービスの活用で大容量ファイルを削減
  • 教師との協力体制が成功のカギ

次回は最終回として、古いコースの整理や問題バンクの最適化、定期メンテナンス運用についてご紹介します。



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