Moodleを利用する際、多くの方がまず「コースの作成」に注目します。
しかし、教材や活動の準備に集中するあまり、「コースをどのように運用するか」まで考える余裕がなく、実際の運用で手間がかかってしまうケースが多く見受けられます。
たとえば、「クラスの数だけ同じコースを複製して管理している」――そんな運用をされていませんか?
今回は、こうした運用の負担を軽減してくれる「グループ機能」に焦点を当ててご紹介します。
意外と多くの方が、「グループ機能」の存在を知らなかったり、使い方をあまり理解しないまま過ごしているのが実情です。
「そんな機能があること自体、初めて知った」
「なんとなく使ったことはあるけれど、実はよくわかっていない」
そんな方に向けて、この記事ではMoodleのグループ機能の基本的な考え方と、実際の活用シーンをわかりやすくお伝えします。
🎯 Moodleにおける「グループ」とは?
Moodleの「グループ」機能は、受講者を「班」や「チーム」のように分けて管理するための仕組みです。ひとつのコースに複数の受講者がいる場合でも、グループを作ることで小分けして運用・管理することができます。

例えば、同じ研修コースを「営業部」と「開発部」の2つのグループに分けて受講させたい場合や、内容は同じでも「午前チーム」「午後チーム」に分けて進行したい場合に役立ちます。
「クラスはひとつだけれど、グループごとに進め方を変えたい」
そんな場面で、グループ機能が力を発揮します。
✅どんな時に使える?活用シーン例
CASE1:【基本】クラスや部署、日程ごとの受講管理
同じ研修コースであっても、「営業部」「開発部」などの部署ごとや、「午前の部」「午後の部」といった日程ごとにグループを分けることで、受講状況や提出物をグループ単位で整理・管理できます。 フォーラムやレポート課題をグループごとに分離することで、混乱のない運用が可能になります。
CASE2:【基本】ひとつの活動をグループごとに実施
グループ設定を有効にしたフォーラムや課題では、同じ活動をグループ単位で並行して実施することができます。 たとえば1つのディスカッションフォーラムでも、グループ別でスレッドが整理される他、他グループの投稿は閲覧・返信できないという運用も可能です。
CASE3:【応用】特定グループにのみ活動を表示・公開
フォーラムや課題などの活動ごとに、「このグループだけが利用できる」といったグループ制限を設定することが可能です。 例えば、「営業部にはフォーラム活動を表示するが、開発部にはフォーラム活動そのものを見せたくない」といった柔軟な設計ができます。
CASE4:【発展】グループ活動で協働学習を実現
グループ単位で協働して取り組む形式の活動(例:プレゼン作成、課題提出)も設定可能です。 代表者がグループを代表して1件の提出を行い、グループ全体で成果を共有する運用ができます。 チーム学習やプロジェクト型学習との相性が良いのも特長です。
🔄 グループ機能の基本構造
グループ機能は、主に「グループ」と「グルーピング」の2つの要素で構成されています。
- 「グループ」:参加者をひとまとまりの単位に分けるものです(例:A班、B班)
- 「グルーピング」:複数のグループを束ねる「セット」のようなものです(例:A班+B班=第1グループ)
この記事では、基礎となる「グループ」機能に絞って、分かりやすくご紹介していきます。 まずは「受講者をどうグループ分けするのか」「どんな時に役立つのか」を知ることから始めましょう。
🛠️ グループ機能の基本設定
グループの作成
- コースにアクセスし、「参加者」→「登録済ユーザ」のプルダウンメニュー→「グループ」→「グループを作成する」
- 「グループ名」に名称を入力します
- 「グループメンバシップ可視性」はグループの運用方針によって選択します
- 各受講者をグループに割り当てます
グループメンバーの可視性を決める
Moodleのグループには、「誰がどのグループに所属しているか」をどの範囲まで見せるかを設定できる「グループメンバシップの可視性」というオプションがあります。
これは参加者一覧ページでの表示に影響するだけでなく、活動モジュール(例:フォーラムや課題)における動作にも関わってきます。
活動にグループモードを適用しよう
グループを作成しただけでは、活動に対して自動的にグループ機能が反映されるわけではありません。
各活動に「グループモード」を設定することで、グループごとの分離や表示の制御が可能になります。
設定場所:
グループモードを設定したい活動の設定画面 → モジュール共通設定 → グループモード
❓よくある誤解と注意点
ロールと混同しないように注意
Moodleには「ロール(役割)」という概念もありますが、グループとロールはまったく別のものです。 ロールは「管理者」「教師」「学生」などの権限レベルを決めるためのものであり、一方でグループは、同じロールのユーザーを班やチームに分けるための機能です。 「営業部の受講者をグループに分けたから、何か権限が変わる」ということはありません。
グループ機能を有効にしないと意味がない
Moodleでは、グループを作成するだけでは機能しません。 フォーラムや課題など、活動ごとに「グループモード」を正しく設定する必要があります。 たとえば、フォーラムで「グループモード」が無効のままだと、すべてのグループの投稿が全員に見えてしまうことになります。
設定ミスで全体に公開されることも
「特定グループだけに課題を出したつもりが、全受講者に見えていた」といったトラブルも少なくありません。 活動を作成する際には、「表示対象」や「グループモード」の設定を見落とさないようにしましょう。
まずは「1コース内に2つの班がある」イメージで
Moodleのグループ機能は、初めて触ると少し難しそうに感じるかもしれません。 しかし、「ひとつの教室の中に、複数の班がある」というイメージで考えると分かりやすくなります。
ちょっとしたグループ分けから、大規模な研修の進行管理まで、幅広く活用できるこの機能。 いきなり複雑なことをしようとするのではなく、まずはシンプルな設定から始めて、少しずつ慣れていくことをお勧めします。
Moodleはステップ・バイ・ステップで理解・活用していくことが大切なシステムです。 堅実にレベルアップしていきましょう。